葉子ようこ)” の例文
葉子ようこは、学校から帰ると大急ぎで野原へ出て、いつぞや森先生が仰有おっしゃった、お好きな花を抱えきれないほどたくさんに摘みとった。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
新橋しんばしを渡る時、発車を知らせる二番目のベルが、霧とまではいえない九月の朝の、けむった空気に包まれて聞こえて来た。葉子ようこは平気でそれを聞いたが、車夫は宙を飛んだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
叔父は学校から帰って来た末の妹の葉子ようこと何やら話し乍ら歩いている。少し俯向き加減に懐手をし乍らゆっくりと歩いている。葉子が何やら時々くすくすと笑っているらしい。
恩人 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「お京は、あたしの母です。あたしは、葉子ようこと申します」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
森先生に呼ばれて、葉子ようこはそのノートを先生の前へ出した。先生はすこしこわい顔をしてノートを開けて御覧になった。するとそこには、先生の顔がいてあった。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
どこかから菊の香がかすかにかよって来たように思って葉子ようこは快い眠りから目をさました。自分のそばには、倉地くらちが頭からすっぽりとふとんをかぶって、いびきも立てずに熟睡していた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
つぎの日も、そのつぎの日も、葉子ようこは森先生を橋の上で待合して学校へ行った。けれどノートの事については何にも仰有おっしゃらなかった。葉子もそれをきこうとはしなかった。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)