いぢ)” の例文
身装みなりや何かに裏町の貧民窟らしい匂ひはしてゐても、悪怯わるびれたところや、いぢけたところは少しもなかつた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
とさへ思つた父! われ/\少年時代の幸福の全部を引浚ひきさらつて行つてしまつた父! その父のためにこそわれ/\兄妹はどんなに悲しいいぢけた生活をして来たことか?
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
多分姉妹二人、よく/\の事情で女衒ぜげんの手に渡り、年上の姉は佐野喜の店で勤め、年弱で身體もいぢけきつてゐる妹のお鶴は、寮の下女代りにこき使はれてゐたのでせう。
そんな頑丈な身體をしてるし、辛抱強いのに、机の前でいぢけてるのは詰まらないぢやないか。先日こなひだ山から見た島を借りて桃を栽ゑても、後ろの禿山はげやまひらいても何か出來さうぢやないか。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)