莫迦々々ばかばか)” の例文
しかし何時迄いつまでもみているのは莫迦々々ばかばかしくなって、ぼくと柴山はその場をはずし、なんとなくそこらを散歩してから歩いて帰りました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ふと、たゞこれだけの月日、たゞこれだけの自分ではといふやうな不満が覚えられて莫迦々々ばかばかしい気持になりかけます。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
遊人などをちかづけていた母親の過去を見せられて来た房吉の目には、彼女の苦しみが、滑稽こっけいにも莫迦々々ばかばかしくも見えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
勝手に腰かけていて取りにくれば黙々として金を出すほうも、いかにもいぎりす人らしく、莫迦々々ばかばかしく野呂間のろまで、神経のふといところがうかがわれる。
いや、小説ばかりじゃない、一体の人生観という奴が私にゃ然う思えるんだよ……思えると云うと語弊があるが、那様そんな気がするのだ。どうも莫迦々々ばかばかしくてね。
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その議員の多数の顔触かおぶれを一見しただけで既に莫迦々々ばかばかしいという気がするのでした。
三面一体の生活へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
旅人は莫迦々々ばかばかしさに苦笑せずにいられなかった。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ふと、ただこれだけの月日、ただこれだけの自分ではというような不満が覚えられて莫迦々々ばかばかしい気持になりかけます。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
出たてのころ目につくのは、大抵若いのっぺりした男なのだが、鳥居の数が重なるにつれ、若造ではい足りなくなり、莫迦々々ばかばかしい感じのするのが、彼女たちの早熟の悲哀であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
すると、ぼくには、不意と、なにか死ぬのが莫迦々々ばかばかしくなり、ことに、死ぬまでの痛さが身にみておもわれ、いそいで、足をバタつかせ、圧迫されていた腸のあたりを、まえにもどしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
保守主義者の反抗思想の中には随分莫迦々々ばかばかしいものがあります。
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
が、何という莫迦々々ばかばかしい大仰さ。
鶴さんはことばのはずみで、そう言っていたが、お島は、何を言っているかと云うような気がして、しまい莫迦々々ばかばかしかった。それでけろりとした顔をして、外を見ていながら、時々帰りを促した。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)