荒蕪地こうぶち)” の例文
そして今年の七月十四日に「全計画の成否を決定すべき一弾」がニューメキシコ州僻陬へきすう荒蕪地こうぶちに建てられた鉄塔の上につるされるまでは
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
相当広範囲にわたる農村から相当の需要があり、殊に最近荒蕪地こうぶちを開発した佐原山頂附近一帯の市有開墾地もよい得意であった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それは北見と石狩の国境に近く、ふたつのけわしい山塊さんかいに囲まれた平原で、湿地や沼沢の多い、つぶて洗出あらいだされたひどい荒蕪地こうぶち取巻とりまかれていた。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さて、この赤三角研究団は元気のいい青年たちで編成せられて居り、研究団の本部はアリゾナの荒蕪地こうぶちにあった。そこからは遙かにコロラド大峡谷の異観が望見された。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
稲田桑畑芋畑の連なる景色を見て日本国じゅう鋤鍬すきくわの入らない所はないかと思っていると、そこからいくらも離れない所には下草の茂る雑木林があり河畔の荒蕪地こうぶちがある。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
其外は、広い水田と、畠と、存外多い荒蕪地こうぶちの間に、人の寄りつかぬ塚や岩群いわむらが、ちらばって見えるだけであった。兎や、狐が、大路小路を駆け廻る様なのも、毎日のこと。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
彼は夷族のはびこる荒蕪地こうぶちに、求めて移って、難渋の限りをつくしているというのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
荒蕪地こうぶちの方は、ハリエニシダの花が満開中で、四月の太陽を受けて、黄金色に燦爛さんらんとしていた。私はその一つの茂みのかげの、道路の両端と、廃院の門とがよく見える位置に身をひそめた。
トラックは開墾地かいこんちの間を縫っている曲折の多い山道を濛々もうもうたる土煙をあげよたよたと走った。この辺は佐原山さはらやまの頂上であって、数年前までは笹や灌木かんぼくなどの密生した全くの荒蕪地こうぶちであったのである。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)