茅屋わらや)” の例文
其日そのひはそれでわかれ、其後そのごたがひさそつてつり出掛でかけたが、ボズさんのうちは一しかないふる茅屋わらや其處そこひとりでわびしげにんでたのである。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
⦅あの眼もとの涼しいおれのハンナは、もう寐てゐるかしら?⦆さう思ひながら、彼は、われわれにはすでに馴染の、くだんの桜の木立にかこまれた茅屋わらやへと近づいた。
娘が死亡うせての十三回忌より老爺は不起の病にかゝりぬ、觀念の眼かたく閉ぢては今更の醫藥も何かはせん、哀れの孫と頑なの翁と唯二人、傾きたる命運を茅屋わらやが軒の月にながめて
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どの茅屋わらやの戸の透間すきまからも
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
信心ぶかい人々はもうとうに寐ついてゐる。ただ此処彼処の狭い窓に灯影がさしてゐるばかり。二三の茅屋わらやでは、時刻に遅れた家の者が入口の閾のきはで晩い夕餉をしたためてゐる。