若王子にゃくおうじ)” の例文
熊野権現の一つ、若王子にゃくおうじのご本尊を乗せ、旗の横上よこがみには金剛童子を書いた、この湛増の兵船が現れると、源氏も平家も、共に手を合わせて拝んだ。
また巻六志太郡藤枝町大字若王子にゃくおうじの押切川蓮池はすいけに隣する北の谷に泉あり、アワラという。その下流時ヶ谷を経て葉梨川に入るとある。これは湧水ゆうすいの所かと思われる。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天狗星てんぐせいの流れます年の春には花頂若王子にゃくおうじのお花御覧、この時の御前相伴衆ごぜんしょうばんしゅうはしは黄金をもってべ、御供衆おともしゅうのは沈香じんこうを削って同じく黄金の鍔口つばぐちをかけたものと申します。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
あの堀川の御所ごしょうかがわれます通り、若殿様が若王子にゃくおうじに御造りになった竜田たつたの院は、御規模こそ小そうございますが、菅相丞かんしょうじょうの御歌をそのままな、紅葉もみじばかりの御庭と申し、その御庭を縫っている
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
楓が芽をふき始めるのは四月の中ごろであったと思うが、若王子にゃくおうじの池畔にある数十本の楓だけでも、芽の出る時期は三、四段に分かれており、新芽の色もはっきり四、五種類に見分けることができた。
京の四季 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
天狗星てんぐせいの流れます年の春には花頂若王子にゃくおうじのお花御覧、この時の御前相伴衆ごぜんしょうばんしゅうはしは黄金をもつてべ、御供衆おともしゅうのは沈香じんこうを削つて同じく黄金の鍔口つばぐちをかけたものと申します。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
十一月七日の車駕しゃが御到着の日などは、雲もない青空に日がよく照って、御苑ぎょえんも大通りも早天から、人をもってうずめてしまったのに、なお遠く若王子にゃくおうじの山の松林の中腹を望むと
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)