花牌はな)” の例文
階下したは小さなカッフェになっていて、曖昧な娼婦おんな達や、それらに飼われている情夫おとこ達がそこに集まって花牌はなをひいていた。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
同じ顔ぶれがたいがい顔を揃へてゐて、麻雀の者、碁を打つ者、花牌はなをひく者、けんを打つ者、酒を飲む者。
外套と青空 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
酒だおんな花牌はな虗栄みえだと魂を使われて居る手合が多いのだから、大川の夜景などを賞しそうにも無い訳だ。
夜の隅田川 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
先の時分に、もうどうしても花牌はなの道楽が止まないから、いよいよ出て戻ろうかどうしようかとさんざん思いあぐんで、頭髪かみも何も脱けてしまって、私は自家うちで肩で呼吸いきをしている。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
卓一はその日社用が輻湊ふくそうして、七時ごろ、やうやく左門の家へきた。日が暮れると、雪が降りだしてゐた。他巳吉が一足先にやつてきてゐて、老人達は花牌はなをひいて遊んでゐた。
天にも地にもたった一人の可愛い者であったあの情夫おとこが、宿のカッフェで花牌はなをひきながら彼女を待っていてくれたから——彼女はそんなことを思いだしながら、腰にしなをつくって
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
その三局も、やがて一局で切上げようと努力した。あとは花牌はなを引くのであつた。
やっとホテルまで帰って来ると、転げるように戸口を入った。ホテルの連中は、例のむっとするうん気と煙りの中でまだ花牌はなをひいていたが、彼女の顔を見ると皆んなが変に黙りこんでしまった。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
他巳吉と卓一は万年床を隅の方へ押しやつて、毛布に膝をくるみながら花牌はなをひくことになつてゐる。この部屋の主人は火をおこす煩労にも堪えかねるので、炬燵もかかつてゐなかつた。