花心かしん)” の例文
花心かしんのような唇、豊かな頬、かすかに上気した眼のふち、そのパッチリしたうるおいのある彼女の両のまなこは、階段のはるか下の方に向いていて動かない。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
清い、単純な、あたたかな其花を見つめて居ると、次郎さんのニコ/\した地蔵顔じぞうがお花心かしんから彼をのぞいた様であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なお四人、六人、八人と、数を加えて、同じように光秀の死骸をめぐって殉じた人たちの亡骸なきがらは、またたくうちに大きな一箇の血の花弁かべん花心かしんを地上に描いた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花弁かべんは平開し、およそ十ぺん内外もあるが、しかし花容かよう、花色種々多様しゅじゅたようで、何十種もの園芸的変わり品がある。花心かしんに黄色の多雄蕊たゆうずいと、三ないし五の子房しぼうがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)