色摺いろずり)” の例文
薩摩さつま蝋蠋らふそくてら/\とひか色摺いろずり表紙べうし誤魔化ごまくわして手拭紙てふきがみにもならぬ厄介者やくかいもの売附うりつけるが斯道しだう極意ごくい当世たうせい文学者ぶんがくしや心意気こゝろいきぞかし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
ば殊更目につきやすいように色摺いろずりにしてあるのみならず時としては案内記のようにこの処より何々まで凡幾町およそいくちょう植木屋多しなぞと説明が加えてある事である。
懸物かけものでも額でもすぐ人の眼につくような、書斎の装飾が一つ欲しいと思って、見廻していると、色摺いろずりの西洋の女のが、ほこりだらけになって、横に立てけてあった。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近来雑誌の表紙を模様色摺いろずりとなしかつ用紙を舶来紙となす事流行す。体裁上の一進歩となす。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かかる大板の浮絵は宝暦に入りて鳥居清満が紅絵を最後とし色摺いろずり錦絵いづると共にしばら杜絶とぜつせしが安永に及び歌川豊春の浮絵となりて更にその流行を増しぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
寛保かんぽう三、四年に至り始めて色摺いろずり紅絵べにえ現はれ一枚絵の外また役者似顔の団扇絵うちわえようやく流行せり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
歌川国直が色摺いろずり絵本のうちに豊国の『時勢粧いまようすがた』に模したる『美人今様姿びじんいまようすがた』二巻あり。豊国の作は寛政風俗を見るに便なるが如く国直の作は文政時代の風俗史料となすに足るべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)