船手ふなて)” の例文
船手ふなて奉行の手で、川口の舟を調べはじめたのは、中一日置いた二十一日の晩からである。城の兵備をてつしたのも二十一日である。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
とにかく、蜂須賀の船手ふなての衆は、店にも大事な顧客とくいであるので、いやいやながらも顔をだした。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
守らせおきの方は船手ふなてへ申付深川新地しんちより品川おき迄御船手ふなてにて取切御そなへの御船は沖中おきなかへ押出し其外鯨船げいせん數艘すそうを用意し嚴重げんぢうこそそなへける然ば次右衞門は桐棒きりぼう駕籠かごに打乘若徒わかたう兩人長柄ながえ草履ざうり取を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「お船手ふなて、お船手。……おうい、船の衆」
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「簡単にね、結構でございます。じゃ手ッ取り早く申しますが、森様、まことにご迷惑じゃございましょうが、ひとつ、わっしをお船手ふなてか何かでお使いなすって下さいませんか」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蜂須賀家はちすかけのお船手ふなて九鬼弥助くきやすけ森啓之助もりけいのすけ。ともう一人は、やや風采が異なって、紺上布こんじょうふ野袴のばかまをつけ、自来也鞘じらいやざやの大小を落した剣客肌の男——阿波本国の原士天堂一角はらしてんどういっかくであった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裏崖から、ここへ登ってきた中には、お船手ふなての森啓之助と九鬼弥助がまじっていた。いずれも、同じように覆面しているので、夜目には互いの間にも、それが誰かさえ分らない程である。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)