興趣きょうしゅ)” の例文
待っている間少し工夫して見たが、一句もまとまらないうちに、橋本が筆と墨をかかえて出て来たので興趣きょうしゅは破れてしまった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天幕の外もさゞめいた。きょう未だ尽きぬので、今一つ「墨絵すみえ」の曲を所望する。終って此興趣きょうしゅ多い一日の記念に、手帳を出して関翁以下諸君の署名を求める。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ととっさに見きわめて、畳のうえに呼び入れて差し向かい、一問一答のあいだにきくすべき興趣きょうしゅ滋味じみこんこんとして泉のよう——とうとう夜があけてしまった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
釣遊の目的は、もとより魚を獲るにあれども、真の目的物は、魚其の物に非ずして、之を釣る興趣きょうしゅにあり。
研堂釣規 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
一座の興趣きょうしゅは、仮装の福禄寿に集まって行った。福禄寿は早速、その周囲の二、三人の手で帯をかれた。同時に三つの杯が転がり出た。万は急霰きゅうさんのような拍手に包まれた。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
この二つの事実を左右のつばさとして、論理的に一段の交渉を前方に進めるならば、我々は局外者に向って興趣きょうしゅある一種の結論を提供する事が出来る。その結論とはこうである。——
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)