おさ)” の例文
即ち木石ぼくせきならざる人生の難業ともいうべきものにして、既にこの業をおさめて顧みて凡俗世界を見れば、腐敗の空気充満して醜に堪えず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
顖顱しんろ科ノ名医ナリ。天民幼ヨリ唯詩ヲ好ミ医術ヲおさメズ。父没シテ業ヲ改メ詩人トナリ、名海内ニ振ヒ公侯縉紳しんしんノ間ニ優遇セラル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
榛軒は辺幅へんぷくおさめなかった。渋江の家をうに、踊りつつ玄関からって、居間の戸の外から声を掛けた。自らうなぎあつらえて置いて来て、かゆ所望しょもうすることもあった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
くその徳義をおさめて家内に恥ずることなく戸外にはばかる所なき者は、貧富・才不才に論なく、その身の重きを知って自ら信ぜざるはなし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また徳義のみをおさめて智恵の働あらざる者は石の地蔵にひとしく、これまた人にして人にあらざる者なり。
文明教育論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
他人の醜美は我が形体の苦楽に関係なきものなれども、その美を欲するはあたかも我が家屋を装い庭園をおさめ、自からこれをて快楽を覚ゆるの情にことならず。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その士気の凜然りんぜんとして、に屈せずこうげず、私徳私権、公徳公権、内におさまりて外に発し、内国の秩序、斉然巍然せいぜんぎぜんとして、その余光を四方にかがやかすも決して偶然にあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)