えびす)” の例文
その当時、戎呉じゅうごというえびすの勢力が盛んで、しばしば国境を犯すので、諸将をつかわして征討を試みても、容易に打ち勝つことが出来ない。
とりわけ、えびすが好んで吹く、という笛を聴くたびに、郷愁はますばかりで、ついには、思慕の悲しさから、みずから十八曲を作曲した。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堅城壺関こかんも、その夜ついに陥落し、高幹は命からがら北狄ほくてきの境をこえて、えびす左賢王さけんおうを頼って行ったが、途中家来の者に刺し殺されてしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかし、蔡邕と交わりを深めていた頃の話であるが、蔡邕に蔡琰さいえんという娘があった。縁あって、衛道玠えいどうかいに嫁いだが、韃靼だったん生虜いけどられ、えびすのために無理に妻とせられてしまった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蔡琰の悲嘆は、天地も崩れるばかりであったが、ついにえびすの子二人までも生んだ。しかし明けるにつけ、暮るるにつけ、この沙漠不毛の国に囚れては、故郷恋しく、涙に袖の乾く間もなかった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)