背恰好せいかっこう)” の例文
その瞬間、泉原はてっきりその女をグヰンだと思った。しかしそれはあやまりで、背恰好せいかっこうや顔立は見違える程似ているが、全くの別人であった。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
物腰から背恰好せいかっこう、声の調子、ちょいとした癖まで、妙に平次に似ているのと、時々平次でなければならない事をするので、噂が次第に根強い疑いになり
その潜り戸からおどり込んだ二人、小倉の袴に朱鞘に覆面、背恰好せいかっこうとも、忠作の家で金目の葛籠つづらを奪って裏口から悠々と逃げた強盗武士そのままの男であります。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、翌日瀬沼兵衛の逐天ちくてんした事が知れると共に、始めてそのかたきが明かになった。甚太夫と平太郎とは、年輩こそかなり違っていたが、背恰好せいかっこうはよく似寄っていた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日野さんのその坊っちゃんという人の容貌かおかたち背恰好せいかっこうを話して戴けまいかという私の頼みに応じて、茂十さんの話してくれたのは、私の逢ったあの少年と寸分の違いもない背恰好容貌
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
見受けるところ年の頃は道庵とほぼ近いし、気のせいか背恰好せいかっこうもあれに似たところがある。それを見ると木口親分もグッと気を入れたが、安直が思わず膝を進ませ
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)