肉躰にくたい)” の例文
そうなれば斯業しぎょう経営についての犬馬の労は云うまでもなく、自分はこの肉躰にくたいも精神もあげて貴女のために忠誠をつくすでありましょう
陽気な客 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その苦しさは肉躰にくたい的なもので、まず嘔きけがこり、ついで胸を搾木しめぎにかけられるか、ひき裂かれでもするような気持になる。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
年はもう三十五になるが、肉躰にくたい的な快楽以外にはなんの関心もなく、精神的には十五、六歳のまま成長がとまっているようだ。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
肉躰にくたいも精神もすっかり麻痺まひして、自分がいまなにをしているかも、どうしてそんなところに立っているかもわからなかった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
青年A (胸をたたき両手を高くあげて絶叫する)おれのこの肉躰にくたいを見ろ、おれはきさまたちより美しく健康だ、おれはきさまたちの三人まえべ、十人まえ働く
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
躯に娘らしいまるみがあらわれるにつれ、自分の肉躰にくたいが汚辱されけがされ、腐ってゆく革袋かわぶくろのように思えた。そして男がうらやましく、男に生れてこなかった自分を憎悪した。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
栄二は板の間へぶっ倒れたまま、躯じゅうの痛み、特に脇腹の痛みでうなっていた。云うまでもなく、そういう肉躰にくたい的な痛さよりも、なにより耐えがたいのは心の痛手であった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
都留はそのときひざの上に重ねていた手をぎゅっとこぶしに握りしめた。心でなにか思うよりさきに肉躰にくたいが反応を示したのである。都留はけんめいに自分を抑えながら惣兵衛の顔を見あげた。
晩秋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私のの焦点は自動的に拡大し、対象物とのあいだに一種の保護膜を張ったのであるが、それでもなお彼女たちのたくましい肉躰にくたい、特に第二次性徴と呼ばれる部分のよく発達した、魅惑的な
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
肉躰にくたいは消耗しつくしたため、生前のおもかげはなくなっているのであろうが、眼窩がんかも頬も顎も、きれいに肉をそぎ取ったように落ち窪み、紫斑のあらわれた土色の、乾いた皺だらけの皮膚が
肉躰にくたい的にも精神的にも、余すところなく映画の中へ溶け込んでいた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
肉躰にくたい的にも精神的にも、余すところなく映画の中へ溶け込んでいた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼は殆んど肉躰にくたいにまで感じはじめた。