肉置ししお)” の例文
文女は肉置ししおきのいい大柄なひとで、坐りはじめたら、つまもうごかさずに何時間でも坐っているという、どっしりとした風格だった。
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
額襟許清らに見え、色いと白く肉置ししおく、髪房やかに結いたるが、妖艶あでやかなることはいわむ方無し。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小熊のように肉置ししおきのいい豆太郎が、煩悩ぼんのうのほのおに燃えたって襲ってくるのだ。その、大きな醜悪な顔を間近に見たとき、弥生はもはや観念のまなこをつぶろうとした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
薄着の下にほぼ在りどころがうかがわれる肩やしりのむっちりとした肉置ししおきは、この上品な京生れの女には気の毒なくらい若さに張り切って、二十二三———と云う歳頃をはっきり語っているのである。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
霊の友会の霊媒は、さる資産家の夫人で、道楽にそんなことをやっているということだが、肉置ししおきのいい、ゆったりとした感じで、身の振りも大きく、卑しげなところはなかった。
雲の小径 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ふふふ、ええ肉置ししおきじゃ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
肉置ししおきのいい、天平時代の直流のような豊満な肉体をもち、よく頭のまわる、聡明な女だったが、当代のえせ才女のように文才を鼻にかけて男をへこます軽薄な風もなく、面白ければ笑い
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)