職掌しょくしょう)” の例文
かれはさすがに、職掌しょくしょうがら落ちついていて、あのような大椿事だいちんじのときにもあわてないで、ひとりのあやしい人物をみとめたのだ。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
連歌師の中にはまた職掌しょくしょうを利用して京都方面から関東へのスパイや連絡係を勤めたものもあったというから幾分その方の用事もあったには違いないが
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
義理のために白状したのだと信じて自分で取り調べようかとも思われたのですが、職掌しょくしょう上面白くないから、俊夫君に事件の捜査を依頼に来られたのであります。
頭蓋骨の秘密 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
下らない、あなた、あれであなたのお職掌しょくしょうにでもけちが付いたらほんとうにばかばかしゅうござんすわ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
チーキャブは「その秘密の用事というのは私の職掌しょくしょうとして聞いて置かなくちゃあならぬ」という。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「お前の言葉だけでは信ずる事は出来ないから、三階へ上って見る。」といって職掌しょくしょうを書いた名刺を示した。女はひどく狼狽した様子であったが、故意わざと玄関口に立ちはだかって
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
そのほか、あなたこなたの職掌しょくしょうきも、茶屋酒、用うべし、脂粉の好みには、女も供えてやるがよく、小判小粒ですむところは、なぜ、手でつかみ出して、いてやらなかったのか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この信仰がはやく少数の氏族に限られて、おおやけには承認せられなくなったらしいが、沖縄諸島ではなお久しい後まで、是が協同生活の根幹をなし、ニルヤの交通をもって職掌しょくしょうとした人々が
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「わしの職掌しょくしょうは犯人と取組とっくみあいをすることで、幽霊の世話をすることは職掌にないですぞ」
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
長門守も、きょうは所司代としてではなく、春長軒という、一箇の知人として、信長に招かれたらしいが、やはりどこか君臣という固さと職掌しょくしょうの範囲から解かれず、座談もどこかぎごちない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いえ、職掌しょくしょうですから、そんなことあ、なにも」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)