老猫おいねこ)” の例文
空家あきやへ残して来た、黒と灰色とのまだらの毛並が、老人としよりのゴマシオ頭のように小汚こぎたならしくなってしまっていた、老猫おいねこのことがうかんだ。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この老猫おいねこと老嬢は、お互いに理解し合っていた。何方どっちもこうした隠者くさい生活が好きで、長い夏の午後なんか、鎧戸を閉めて、窓布リドオをおろしたへやの中に寂然ひっそりと引籠っていた。
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
亡者の住居すまいに石で裏階子うらばしごを掛けたような、こけすべる落葉のこみち、しかもやぶの下で、老猫おいねこの善良なのがもし化けたら、このほかになりようはなさそうな、べろんとけて、くちゃくちゃと目の赤い
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)