老父おやぢ)” の例文
平常ふだんから鈍い方の頭が昨夜の故でスッカリ勞れ切つてボンヤリして、「老父おやぢが死んで、これから乞食をして國へ歸るのだ」
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
すると軌道レール沿ふて三にん田舍者ゐなかもの小田原をだはら城下じやうかるといふ旅裝いでたちあかえるのはむすめの、しろえるのは老母らうぼの、からげたこし頑丈ぐわんぢやうらしいのは老父おやぢさんで
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
氏郷の傳を讀めば、當時の英雄等會合の席上に於て、太閤萬一の事あらば誰か天下の主たるもので有らう、と云ふ問に對して、蒲生氏郷が前田の老父おやぢであると云つた。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
老父おやぢ何時いつまで經つても、財産の一部も彼等に手渡しゝない不平を微見ほのめかせた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
平常ふだんから鈍い方の頭が昨夜の故でスツカリ労れ切つてボンヤリして、「老父おやぢが死んで、これから乞食をして国へ帰るのだ」
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
例の菓子屋から、傘がないので風呂敷を被つて帰つて来て見ると、宿の主婦かみさんの渡してくれたのが此手紙です。いくら読み返して見ても、矢張り老父おやぢが死んだとしか書いて居ない。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いくら讀み返して見ても、矢張り老父おやぢが死んだとしか書いて居ない、そんなら何故なぜ電報で知らして呉れぬかと怨んでも見ましたが、然し私の村は電信局から十六里もある山中なんです。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それから能く子供の時に老父おやぢが買つて来て呉れました黒玉——アノ、黒砂糖を堅くした様な小さい玉ですネ、あれを買つて来て、写真などもありませんから、この手紙を机の上に飾つて
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)