羅致らち)” の例文
王侯貴人が往々文芸の士を羅致らちして、声威を張り儀容を飾る具となすように、藤次郎は俳諧師、狂歌師、狂言作者、書家、彫工、画工と交って
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
実際こっちでは、治安妨害とか、風俗壊乱とか云う名目みょうもくもとに、そんな人を羅致らちした実例を見たことがない。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
欧羅巴ヨオロッパの某大国の Corpsコオル diplomatiqueジプロマチック で鍛えて来た社交的伎倆ぎりょうたくましゅうして、或る夜一代の名士を華族会館の食堂に羅致らちしたのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
文部省は当時すこぶる多く名流を羅致らちしていた。岡本況斎、榊原琴洲さかきばらきんしゅう、前田元温げんおん等の諸家が皆九等乃至ないし十等出仕を拝して月に四、五十円を給せられていたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
高井たかゐ殿に信任せられて、耶蘇やそ教徒を逮捕したり、奸吏かんり糺弾きうだんしたり、破戒僧を羅致らちしたりしてゐながら、老婆豊田貢とよだみつぎはりつけになる所や、両組与力りやうくみよりき弓削新右衛門ゆげしんゑもんの切腹する所や
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)