縲紲るいせつ)” の例文
一たびこれに触れると、たちまち縲紲るいせつはずかしめを受けねばならない。さわらぬ神にたたりなきことわざのある事を思えば、選挙権はこれを棄てるにくはない。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
自らその罪を責めて、甘んじてくべき縲紲るいせつを、お鶴のために心弱り、ひとややみよりむしろつらい、身を暗黒に葬ったのを、ひそかに知るは夫人のみ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
間道を取れば強盗及び猛獣の難あり、公道を取れば縲紲るいせつはずかしめを受くる恐れあり、いずれの道を取れば無事に目的地に着く事が出来ましょうか。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
縲紲るいせつの恥かしめを逃れるために自決したと云えば、一応筋道が通っているようですが、実はそこに非常な矛盾があります。一種の心理的不可能と云ってもよいのです。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
子が逆臣にくみしたというとがで、母にも縲紲るいせつの責めが降りかかった。が、幸いにも程昱の情けに扶けられ安楽にはしているが、どうぞ、そなたも一日も早く母の側に来てたもれ。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
失意の人々の中には董狐とうこの筆を振って縲紲るいせつはずかしめに会うものもあり、また淵明えんめいの態度を学んで、東籬とうりに菊を見る道を求めたものもあった。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それでテンゲーリンの臣下がいろいろの事をやったに付け込んで、その主人のテーモ・リンボチェにまでるいを及ぼして、遂に縲紲るいせつの中に横死おうしするに至らしめたのである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)