綽々しやく/\)” の例文
世に知られず人に重んぜられざるも胸中に万里の風月を蓄へ、綽々しやく/\余生を養ふ、この老侠骨に会はんとする我が得意は、いかばかりなりしぞ。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
彼等が自分の跡をけて来ないと云ふ事は彼には一層無気味な事であつた。彼等はいやに余裕綽々しやく/\としてゐる。そして凡てを見抜いてゐるらしい。
いままでは、春雨はるさめに、春雨はるさめにしよぼとれたもよいものを、なつはなほと、はら/\はらとりかゝるを、われながらサテ情知なさけしがほそでにうけて、綽々しやく/\として餘裕よゆうありしからかさとともにかたをすぼめ
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
嗟吁あゝ人生の短期なる、昨日きのふの紅顔今日けふの白頭。忙々促々として眼前の事に営々たるもの、悠々いう/\綽々しやく/\として千載の事をはかるもの、同じく之れ大暮の同寝どうしん。霜は香菊をいとはず、風は幽蘭をゆるさず。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)