經緯いきさつ)” の例文
新字:経緯
深川島田町への道すがら、錢形平次は八五郎のために、事件の經緯いきさつを五年前主人佐原屋甚五兵衞が殺された時にさかのぼつて話しました。
讀者よ、かうした經緯いきさつを細々述べ立てることは、愉快ぢやないのだ。ある人々は過ぎ去つたにがい經驗を囘想して見ることは一種の享樂だといふ。
(印刷文明史)といふやうな經緯いきさつは、「揚屋」の内容は疑問としても、まるきり無視することの出來ない文章であらう。
光をかかぐる人々 (旧字旧仮名) / 徳永直(著)
どうして奎吉がそんな破目になつたかと云へば、それは彼の樣な性格の人間には當然な經緯いきさつの結果なのである。
奎吉 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
しかたがないから、散歩でもしながら一つとつくりとこの經緯いきさつを考へて見ようと思つて、おれは戸外そとへ出た。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「二人の素姓が判ると——淺野樣御留守居に願つて、十二年前の經緯いきさつが手に取る如く判つてしまつた。話して聽かせようか、お秀」
きつと何か事があるのでせう、あなたとセント・ジョンとの經緯いきさつを、私に聞かせて頂戴な。
「いや、かへつていろ/\の事が判つたやうな氣がするよ。三千兩の始末を、もう少し詳しく聞きたいが——一體どんな經緯いきさつなんだ」
この細工を引受けたのは、お屋敷の中では婆やだ。婆やが死んでしまへば、お前の乘込んだ經緯いきさつを、知つてる者はなくなる——
嵐の後のぎを見測らつて、林太郎と平次から、改めて父庄司右京と、殘る親類達にことの經緯いきさつを説明して聽かせます。
平次の説明して行くのを聽くと、東海坊が詭計きけいの裏を掻かれて、猛火の中に死んだ經緯いきさつ、一點の疑ひもありません。
盜み出し、ありが物を運ぶやうに、少しづつ運んで江戸へ持つて來たのさ。お安は多分以前は久八の妾か何んかで、七千兩の經緯いきさつをよく知つて居たんだらう
兎も角お前が若い女一人を拾つて、向柳原の叔母さんの家へ連れ込んだ經緯いきさつを話して見るが宜い。俺はそれを聽いてから、とくと思案を定めることにしよう
微賤びせんから引上げて、三千五百石の大身の奧方に直した昔の經緯いきさつは、一言の説明がなくともよくわかります。
「俺は、口幅つたいやうだが、此間からの不思議な事の經緯いきさつを、何も彼も知つて居るつもりだ。最初から話して見よう、——もし違つたところがあるならさう言つてくれ」
前後の經緯いきさつを詳しく話してくれないと、罪のないものが罪を被ることになるよ、——これは物の譬だが、あの大雪の中を忍び込んで、この二階へ迷ひもせずに登つて來た上
娘のお富を引取つて、神田で堅人に生れ變つた經緯いきさつ——平次は何も彼も知つて居たのです。
今までの經緯いきさつは、八五郎兄哥あにいから聞きなすつたらう。證據が山ほどあるし、お駒を
平次はガラツ八の口や、世上の噂で、大體の經緯いきさつは知つて居りますが、念の爲に、藤六や清次の口から、もう一度、人と人との關係や、その日の朝からの細かい出來事や、いろ/\訊ねました。
「文六、卑怯だぞ、——約束通り、幸吉の父親を殺した經緯いきさつを白状せい」
平次は今までの經緯いきさつ細々こま/″\と説明したのです。