細緻さいち)” の例文
思慮の周密しゅうみつ弁別べんべつ細緻さいち標榜ひょうぼうする学者の所置としては、余の提供にかかる不公平の非難を甘んじて受ける資格があると思う。
学者と名誉 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「女子がなぜに貞操を尊重するか。」こういう疑問を起さねばならぬほど、昔の女は自己の全生活について細緻さいちな反省を下すことを欠いていた。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
その以前から、イースト・エンド全体にわたって細緻さいちな非常線が張られ、くしの歯をくような大捜査が行なわれていた。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
教義に就いての細緻さいちな思索などをした事のない父親を論破するのは極めて容易だのに、その容易な事をやっている中に、何時の間にか、自分の態度が我ながらいやになる程
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
けれども彼女は津田が最初に考えたほどこの点において独断的な暴君ではなかった。彼女は思ったより細緻さいちな注意を払って、津田の心理状態を観察しているらしかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時東君は別にこれという明暸めいりょうな答をしなかったので、余は、君、西洋人の書物を読んで、この人のは流暢りゅうちょうだとか、あの人のは細緻さいちだとか、すべて特色のあるところがその書きぶりで
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の神経は、自分に特有なる細緻さいちな思索力と、鋭敏な感応性に対して払う租税である。高尚な教育の彼岸に起る反響の苦痛である。天爵てんしゃく的に貴族となったむくいに受ける不文の刑罰である。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)