累積るいせき)” の例文
彼の四十何年の生涯が累積るいせきした金と一緒にミチの刺青を楽しむ為にだけ崩されて行くのが当然に感じるのである。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
それでも一ヶ所雪倉岳への登りに、赤石岳の南側のように巨岩の累積るいせきしたキレト状の場所があって、岩壁には無数の岩燕が群れていた。この岩壁は楽に踰えられる。
北岳と朝日岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
なぜかと云うのに、此の室内を領しているものはおびたゞしい首、「死」の累積るいせきなのである。そう云う中にあってその娘の持つ若さと水々みず/\しさとは一層引き立って見えたであろう。
沢山の本や論文の中に累積るいせきしている今までの物理学上の知識というものを余り良く知らなくても、る場合には、立派な物理的の研究が出来得るものだろうという気持を持っていたのである。
「霜柱の研究」について (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
あるいは各群卿ぐんけいの統治と大化改新の累積るいせきする諸問題を処理し給いつつ、内においては、血族の和をひたすら祈られたのであるが、上宮太子の御代より壬申の乱にいたる半世紀をかえりみるとき
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
三十年間の金の累積るいせきを彼はこの柳行李に納め続けたのである。ミチは藤三の薄く禿げかかった後頭部を見た。ランニングシャツにパンツ姿の樸訥ぼくとつな後姿に、ミチはたまらない憐憫れんびんを感じた。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)