がゆ)” の例文
救いがゆの状況を一巡見て、館へ帰ると、彼は、いつになく、疲労の色をたたえていた。今暁、一睡はしているのに、なぜかひどく気力がふるわない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなにされながらもはや生への執著も後に残る心配もなく、あすのおやつの果物の注文や好物のあずきがゆのことなど考えながらこの世を去ってゆく母は。
母の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
松がとられたきょうとなっては、もはや来るべき友達も来尽してしまった肩脱けから、やがて版元に重ねての催促を受けぬうち、一気呵成に脱稿してしまおうと、七草がゆを祝うとそのまゝ
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あくる朝は七草がゆを祝って、半七は出がけに八丁堀同心の宅へ顔を出すと、世間がこのごろ物騒がしいに就いて火付盗賊改めが一層厳重になった、その積りで精々御用を勤めろという注意があった。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
以後数日、丹波の山間より神戸地方を遍歴、ふたたび京都に帰り、東映にて撮影中の「宮本武蔵」の進行ぶりを見、その朝、裏千家にて朝がゆの馳走を受け、同日帰京。
年譜 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家々、よねや豆を出し合わせ、ぬるがゆにして、後より来る武者どもに接待せよ。夜に入らば、かがりを出し、松明たいまつをかかげ、武者どもの駈けゆく便りにせよ。戦い終らば、褒美あるべし。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)