笛太鼓ふえたいこ)” の例文
音はと思うに、きりはたりする声は聞えず、山越えた停車場ステイション笛太鼓ふえたいこ、大きな時計のセコンドの如く、胸に響いてトトンと鳴る。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨風祭の折は一部落の中にて頭屋とうやえらび定め、里人さとびと集まりて酒を飲みてのち、一同笛太鼓ふえたいこにてこれを道の辻まで送り行くなり。笛の中にはきりの木にて作りたるホラなどあり。これを高く吹く。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
橿原かしわばらの奥深く、あがるように低くかすみの立つあたり、背中合せが停車場ステイションで、その腹へ笛太鼓ふえたいこの、異様に響くめた。其処そこへ、遥かにひとみかよわせ、しばらく茫然ぼうぜんとした風情ふぜいであった。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、雲がかぶって、空気が湿しめった所為せいか、笛太鼓ふえたいこ囃子はやしの音が山一ツ越えた彼方かなたと思うあたりに、かえるすだくように、遠いが、手に取るばかり、しかも沈んでうつつの音楽のように聞えて来た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
堂の裏山の方で、しきりに、その、笛太鼓ふえたいこ囃子はやしが聞えたと申す事——
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)