笑窪ゑくぼ)” の例文
栄養不良らしい青い顔をして、そりの強い眼鏡を掛けてゐてオドオドした娘だつたが、楢雄が行くたび首筋まであかくして、にこつと笑ふと、笑窪ゑくぼがあつた。
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
宿屋や珈琲店カフエーへ入ると、女給仕が急にあめちよこのやうな甘い笑窪ゑくぼを見せてちやほやしてくれた。
実際藤野さんは、今想うても余り類のない程美しい児だつたので、前髪を眉の辺まで下げた顔が円く、黒味勝の眼がパツチリと明るくて、色は飽迄白く、笑ふ毎に笑窪ゑくぼが出来た。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
遠州は男だつたから、他人ひとの親切をながら、女のやうに唯笑窪ゑくぼを見せて済ます訳にもかなかつた。で、自分の秘蔵のなかから茶器を二つ取出して、親切な二人に贈つた。
従来これまでも幾度かこの部屋に泊り合はせてはゐたが、ついぞ目に着かなかつたものだ。さうかと言つて何も須磨子を責めるには及ばない。世の中には結婚後八年目に初めて女房かない笑窪ゑくぼ発見めつけたものがある。