端物はもの)” の例文
このあいびきは先年仏蘭西フランスで死去した、露国では有名な小説家、ツルゲーネフという人の端物はものの作です。今度徳富先生の御依頼で訳してみました。
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
堺では見向きもされぬ南蛮端物はもの納屋なや払いをしたりし、わずかの間におどろくような蓄財をなしとげたのである。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
また主に端物はものの仕事をしたりしていて、手刷りの機械などもあり、植字組版などの技術的な方面を習得するのに便利であり、李もそうした技術を学んでいた。
浅間噴火口 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
然も端物はものの高価なるを要するより経済上、襦袢を略して半襦袢とし、腰より下に、蹴出を纏ひて、これを長襦袢の如く見せ懸けの略服なりとす、表は友染染いうぜんぞめ
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
プレヴォーの「不在」という端物はものの書き出しには、パリーのある雑誌に寄稿の安受け合いをしたため、ドイツのさる避暑地へ下りて、そこの宿屋の机かなにかの上で、しきりに構想に悩みながら
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
客「然うでしょう、少し声がしゃがれてるし、一中節いっちゅうぶしったろう、あのーなにを唄ったろう……あれは端物はものだがいゝねえ、はなぶさちょう其角きかくさんをしたという、吉田の兼好法師の作の徒然草を」
笹木が或る小さな印刷所を——端物はもの専門のちっぽけなものだが——その株を買って一人で経営してるっていうのを聞き込んで、ついのこのこ出かけていったものさ。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)