空船からぶね)” の例文
と、ふたりが話すのを聞いていたものか、波打ちぎわにあげてあった空船からぶねのなかから、ムックリ起きあがったひとりの船頭せんどう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するといそに近い所に、真白に塗った空船からぶねが一そう、静かな波の上に浮いていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だが最前、万吉が声をあげて呼んだのに早合点して、てっきりこの舟にいるものと思い込んできた面々は、それでもそれが、ぬしなき空船からぶねとは受け取れなかった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それやあどっちみち銚子ちょうしへ帰る空船からぶねだから、乗せて上げまいものでもないが——だが、この関宿せきやどには、河筋にも関所のさくがあるんですぜ。一体お前さんは、その河番所を通る手形を
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして七日七夜も、毎夜、空船からぶねかがりで敵をあざむき、敵がつかれ果てた頃、一夜、こんどはほんとに強兵を満載して、大挙、陸上へ馳けのぼり、黄祖の軍勢をさんざんに追い乱した。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)