空俵あきだわら)” の例文
露八は、淀川に沿って、枚方ひらかたの方角へと、歩きだした。血か、油か、淀は鉛色なまりいろにぎらぎらして、時々、せになった幕兵の死骸が空俵あきだわらみたいにながれて来る。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御蔵は云うまでもなく幕府の貯米倉庫で、八棟の長い蔵が大川に築き出ており、各棟と棟のあいだには、回米船の出入りする掘割が通じ、空俵あきだわらや繩やむしろを入れる、大きな小屋があった。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それが取れども尽くることなき宝の米俵であったのに、或る時底をはたいて白い小蛇こへびが飛び出し、それ以来空俵あきだわらとなったというなどはなお大ウソであるが、この話よりも古くできた信貴山しぎさん縁起えんぎ
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
粮米ろうまい空俵あきだわらや、まきなどが積んである雑然たる中に、又左衛門はどっかり腰をおろして
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、空俵あきだわらでも捨てるように、庄次郎の襟がみをつまんで
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)