そっ)” の例文
まちへお島をそっと住わしておこうと云う相談も出たが、精米所の補助を受けて、かつかつ遣っている浜屋の生計向くらしむきでは、それも出来ない相談であった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
きっとあの火の燃えている処には人がいようと思って、怖る怖る足音を忍んで鉄の戸の側に近寄ってそっと隙間から内を覗いたが、ぼうっと火気のほてを感じたのみでにも目に入らなかった。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大工が道具箱をすみの方に寄せて、帰って行ってから、お島はまたあわただしく箪笥の抽斗ひきだしから取出した着物の包をかかえて、裏からそっと出て行った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お島は小野田の失望したような顔を見るのがいやさに、小野田がいつか手本を示したように、そっと直しものの客の二重廻しなどを風呂敷につつみはじめた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)