禽獣とりけもの)” の例文
旧字:禽獸
猟師かりうどの家につかへ、をさをさ猟のわざにもけて、朝夕あけくれ山野を走り巡り、数多の禽獣とりけものを捕ふれども。つらつら思へば、これまことおおいなる不義なり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
山にはおおかみの話が残り、畠にはむじなたぬきが顕われ、禽獣とりけものの世界と接近していたような不思議な山村の生活の方へ帰って行った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
われ泣いて呉れるか、有がてえ、畜生でさえも恩誼おんぎを知り名残を惜むで泣いてくれるに、それに引換え女房おえいは禽獣とりけものにも劣った奴、現在亭主のおれを殺すべえとする人非人め、これ青
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
追ひまはされる禽獣とりけもの
流石さすが、省吾は未だ子供のことで、其禽獣とりけもの悲嘆なげき光景さまを見ても、丁度お伽話とぎばなしを絵で眺めるやうに、別に不思議がるでも無く、驚くでも無い。無邪気な少年はたゞ釈迦しやかの死を見て笑つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)