禍乱からん)” の例文
(この人は、王道にって、真に国を憂うる英雄ではない。むしろ国乱をして、いよいよ禍乱からんへ追い込む覇道の姦雄かんゆうだ)と怖れをなして、途中の旅籠はたごから彼を見限り
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかもそれ等の霊魂は、死の瞬間におい忿怒ふんぬに充ち、残忍性に充ち、まるで悪鬼あっき夜叉やしゃの状態に置かれて居る。そんなのが、死後の世界から人間世界に働きかけて、いつまでも禍乱からんの種子を蒔く。
さて、前年の約束どおり、八月初めには、御地おんちへまかり越え、かねがね振舞うにまかせておいた佐々成政を成敗せいばいして、積年せきねん禍乱からんの地を正して、秩序を明らかにしたいと思う。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、名門の余望と遺産を持つ遺族の暗愚なる者ほど、禍乱からんの火だねとなりやすい存在はないからである。利用価値が高ければ高いほど、それは危険な存在だといえるのだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、事変後の数日、その余波のもっとも高そうな人と地理と情勢とを、いまその禍乱からんを離れて、天下の全面を高所から大観してみると、帰するところ、どこもかしこも、おどろきの余りに
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は、大恩ある故主信長公の遺子、神戸かんべどのを、自滅させ、今また、信雄のぶおどのへ弓をひき、常に、武門を騒がせ、庶民を禍乱からんに投じ、自己の野望をとぐるために、手段をえらばぬ元兇げんきょうである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)