石礫いしつぶて)” の例文
しかし、その理由と、原因をわざわざと探し求めるまでもなく、米友の身の周囲まわりに降りそそぐ石礫いしつぶてが、とりあえずこの不穏を報告する。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
舞台はやがて昨日きのうの通りに河端かわばた暗闘だんまりになって、劇の主人公が盗んだ金を懐中ふところに花道へ駈出かけいでながら石礫いしつぶてを打つ、それを合図にチョンと拍子木が響く。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あっちの三枚、こっちの五枚、ザラザラひろいあつめていると、とつ! どこからか風をきって飛んできた石礫いしつぶてが、コツンと、燕作えんさくの肩骨にはねかえった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵馬が打った石礫いしつぶて、猛犬の額に発矢はっしと当る。犬は一声高く吠えて飛び退き、爛々らんらんたるまなこを以て遠くから兵馬を睨む。
同時に、石礫いしつぶてほうっていた七、八百の水俣の者が、隊を左右に割って、一線からさッと退いた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立見たちみの混雑の中でもあるし、長吉ちやうきちおどろいたまゝ黙つてゐるより仕様しやうがなかつたが、舞台はやがて昨日きのふの通りに河端かはばた暗闘だんまりになつて、劇の主人公がぬすんだ金を懐中ふところ花道はなみち駈出かけいでながら石礫いしつぶてを打つ
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)