矢痍やきず)” の例文
わずかに、心から市人の胸を慰めたものは、御林軍の大将王必が、矢痍やきずがもとで、これも間もなく死んだということだけであった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
橘は矢痍やきずのあとに清い懐紙かいしをあてがい、その若い男のかおりがまだ生きて漂うている顔のうえに、うちぎの両のそでをほついて、あやのある方を上にして一人ずつに片袖かたそであてかぶせ
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
吉川元春は、すぐその部下の勇将、牛尾元貞うしおもとさだを向けたが、元貞が、矢痍やきずをうけて、病臥してしまったため、ふたたび
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父はその矢痍やきずをしらべた。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
柴田勝家自身も、左のももに一弾の銃瘡じゅうそうと、肩のあたりに一矢の矢痍やきずをうけていた。そればかりか、中軍に持っていた金幣きんぺい馬標うまじるしまで、敵手に奪われてしまい、主従、ちりぢりになって逃げ走った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)