瞥見べつけん)” の例文
斯の如く概説し来りたるところを以て、吾人は、快楽と実用との上に於て吾人が詩と称するものゝ地位を瞥見べつけんする事を得たり。
美しい一人の青年の諸侯に口説くどかれて木陰で接吻をする。それを偶然来掛つたモリエエルが瞥見べつけんした。恋に落ちた若い男女なんによは林の奥へ逃げた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
吾人の所謂いはゆる才子とは何ぞや。智慧ウィスドムを有する人也。智慧とは何ぞや、内より発する者也、外より来る者に非る也。事物の真に達する者なり、其表面を瞥見べつけんするに止る者に非る也。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
同く慇懃いんぎんに会釈はすれど、疑も無く反対の意を示せる金壺眼かなつぼまなこは光をたくましう女の横顔を瞥見べつけんせり。静にしたる貫一は発作パロキシマきたれる如き苦悩を感じつつ、身を起して直行ただゆきを迎ふれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
貫一はその相貌そうぼう瞥見べつけんりて、ただちに彼の性質をうらなはんとこころむるまでに、いと善く見極みきはめたり。されども、いかにせん、彼の相するところは始に疑ひしところとすこぶる一致せざる者有り。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)