眼遣めづか)” の例文
あのなつかしい眼で、優しい眼遣めづかいをただの一度でもしていただく事ができるなら、僕はもうそれだけで死ぬのです。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちょいと見る眼遣めづかいの時に、眼の球が同じ横にきながらも、松五郎のかたを見る時は上のほうへ往くが、僕の方を見る時は、下眼さがりめで、何んだか軽蔑して見るような眼つきだ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
隠居は、こう優しい眼遣めづかいで福子を見た。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
主婦は自分の印象を見抜いたような眼遣めづかいをした。自分が主婦から一家の事情を聞いたのはこの時である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
特に「お前」という言葉に力を入れた叔父は、お延の腹でも読むような眼遣めづかいをして彼女をじっと見た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしそれにしては彼の声がいかにも力に乏しいという事に気が付きました。私は彼の眼遣めづかいを参考にしたかったのですが、彼は最後まで私の顔を見ないのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ついには自分の方から狐のように変な眼遣めづかいをして、兄の顔をぬすみ見なければならなかった。兄はあおい顔をしていた。けれどもけっして衝動的に動いて来る気色けしきには見えなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三沢はこう云いながら、ちょっと意味のある眼遣めづかいをして自分を見た。自分は「そうか」と答えた。その調子が余り高いという訳なんだろう、三沢は団扇でぱっと自分の顔をあおいだ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)