眼瞼がんけん)” の例文
五分! 彼女の唇がその色を恢復すると同時に、眼瞼がんけんがかすかにふるえました。私は思わず、うれしさの叫びをあげようとしました。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
右の眉骨びこつを打ったと見えて眼瞼がんけんがまんじゅうのようにふくれ上がった。それだけかと思っていたが吐きけのあるのが気になった。
鎖骨 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
眼瞼がんけんがぴくぴく痙攣けいれんするのも一つの張合ひになつて来た。湯鑵の湯はすつかり沸き切つて、むやみにぐらぐらひつくりかへつてゐるが彼はかまはなかつた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
九叔は馴れた手つきで、物質の検査でもするように、死骸の眼瞼がんけん口腔こうこう、鼻腔の奥、腹部、背部と引っくり返してていたが、そのうちに自分のこめかみを抑え出して
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大佐はそれから何か考え考え腰をかがめて、携帯電燈の射光を候補生の眼に向けた。私と同様に血塗ちまみれになった、拇指おやゆび食指ひとさしゆびで、真白に貧血している候補生の眼瞼がんけんを引っぱり開けた。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
舌は荒れて、眼瞼がんけんが充血してゐる。そして腹を見た。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ったばかりの天井てんじょうにふんの砂子すなごらしたり、馬の眼瞼がんけんをなめただらして盲目もうもくにする厄介やっかいものとも見られていた。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)