真平まったいら)” の例文
旧字:眞平
彼女がそのきれいな眉を真平まったいらにして、いじらしいほど狭い額へ、妙な風にあげながら、無智な鳶色の眼の奥から、ある人を見つめたことがありさえすれば、その人にはわかってしまうのである。
仰向あおむくと蟇蛙ひきがえるを前から見たように真平まったいらつぶされ、少しこごむと福禄寿ふくろくじゅ祈誓児もうしごのように頭がせり出してくる。いやしくもこの鏡に対するあいだは一人でいろいろな化物ばけもの兼勤けんきんしなくてはならぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれ、あの入江いりえのほとりから、すこひだりれたところにゆる真平まったいら街道かいどう、あれをどこまでもどこまでも辿たどってけば、そのあたりがつまり竜宮りゅうぐうで、みち間違まちがいえるような心配しんぱいすこしもない……。