省察せいさつ)” の例文
二人は自分たちのこの態度に対して何の注意も省察せいさつも払わなかった。二人は二人に特有な因果関係をっている事を冥々めいめいうちに自覚していた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
科学的常識は猶更なおさらである。しかし適当な科学的常識は、事に臨んで吾々に「科学的な省察せいさつの機会と余裕」を与える。
流言蜚語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けれどそれには絶対に、あやまらない文化的な省察せいさつと、一見、弱気にも似ている沈着な力の堅持が必要である。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奈何いかにして人は己を知ることを得べきか。省察せいさつを以てしては決して能はざらん。されど行為を以てしては或はくせむ。なんぢの義務を果さんと試みよ。やがて汝の価値を
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
煩悶はんもんして見たり省察せいさつして見たりした挙句、横着と云ってもいような自覚に到達して、世間の女が多くの男に触れたのちわずかにち得る冷静な心と同じような心になった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)