相思そうし)” の例文
彼女は若い海軍士官が軍籍を脱することについて家族総反対の中に唯一人の賛成者であった。斯くて二人は自然に相思そうしの中となった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
西東にしひがし長短のたもとを分かって、離愁りしゅうとざ暮雲ぼうん相思そうしかんかれては、う事のうとくなりまさるこの年月としつきを、変らぬとのみは思いも寄らぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
辰子はかの教員と相思そうしの仲であったところ、その男が突然に死んでしまったので、辰子はひどく悲観して、おなじ運命を選んだのであろうという。
こま犬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは相思そうしのなかであろうともなかろうとも、男女がさし向いで話をすることを、その狐は理由なしにねたむ、そうしてその腹癒はらいせのために、何か悪戯をして帰るとのことじゃ。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しょうに対してさえ、毎月若干じゃっかんの手当てを送るに至りけるが、夫婦相思そうしの情は日一日にいや増して、彼がしばしば出京することのあればにや、次男侠太きょうた誕生たんじょう間もなく、親族の者より
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「嗤われても何でも、相思そうしのふたりが仲は、どうすることもできません」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これでも学生時代には相思そうしの人があったんだよ」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)