盛塩もりじお)” の例文
客を相手に夜をふかして、まだねむたげな湯女ゆなたちは、しどけない寝乱れ姿で板の間の雑巾ぞうきんがけ、暖簾口のれんぐちの水そうじ、雪をかいたあとへ盛塩もりじおを積んで
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母は、石囲いの四ツ角に、小さい盛塩もりじおをして「オンバラジャア、ユウセイソワカ」と掌を合しておがんだ。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
今春あたりから粋な横町辺に並んだ格子先には、昔にかわらぬ打水に盛塩もりじおの気分がチョイチョイ出ている。
終りに板の間の上をうねうねと揺すぶって、鼠鳴ねずみなきをするのです。それから外へ出て、格子を叩いています。入口には三所ほどに、高く盛塩もりじおがしてありました。縁起を祝うのだそうです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
やっとそこらの額風呂がくぶろの戸があいて、紅殻べにがらいろや浅黄のれんの下に、二、三足の女下駄が行儀よくそろえられ、盛塩もりじおのしたぬれ石に、やわらかい春のしかけるひる少し前の刻限になると
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
表に盛塩もりじおしてレコードをかけていると、風呂から女達が順々に帰って来る。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)