百合根ゆりね)” の例文
和泉いずみの山奥の百合根ゆりねをたずさえる一人に、べつの男はの国の色もくれないのたいおりをしもべに担わせた。こうして通う一人は津の国の茅原かやはらという男だった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ねぎ糸蒟蒻いとごんにゃく、豆腐はよいとして、生麩なまふ生湯葉なまゆば百合根ゆりね、白菜等々、———敏子はそれらをわざと一度に運んで来ないで、ときどき、少しずつ、なくなると後から後からと附け足した。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
耶馬台やまとの宮の若者たちは、眼をますとうわさに聴いた鹿の美女を見ようとして宮殿の花園へ押しよせて来た。彼らのある者は彼女に食わすがために、鹿の好む大バコや、百合根ゆりねを持っていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
日本中の花卉かき花木かぼくを集めた植物園といったような広さである。いまおもうと、社屋のある表の鉄門のわきに、赤煉瓦の倉庫が幾棟か見え、いつも倉庫の口から百合根ゆりねを荷馬車に山と積みこんでいた。