癌腫がんしゅ)” の例文
またエッキス線で照らして皮膚や血液の病をいやす事も往々あるが、しかしこの線のために癌腫がんしゅを生じた例があるから注意を要するとの事。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
生きるために必要な分け前より以上のものをもってる者は、一つの怪物である——他人をかじってる人間の癌腫がんしゅである。
それから四五年の後に私は突然F君の訃音ふいんに接した。咽頭いんとう癌腫がんしゅのために急にくなったと云うことである。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それに彼女の(十二字不明)がねばりついていた。そして、頭部の方からは酸敗さんぱいした悪臭を放っていたし、肢部からは、癌腫がんしゅの持つ特有の悪臭が放散されていた。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
癌腫がんしゅの患者などの臨終には、むしろモルヒネの大量でも与えて、苦痛を完全に除き、眠るが如く死なせた方が、どれ程、患者に取って功徳になるか知れないではあるまいか。
安死術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「これはおまえの筆記に書いてある病例の中の珍らしい一例だ、癌腫がんしゅには違いないが、他のものとはっきり区別のつく症状がある、その病歴の記事をもういちど読んでみろ」
わが藤原の家に起り来りつつある多年の矛盾、撞着、滑稽、紛糾、圧迫、争闘、それが膿瘡のうそうとなり、癌腫がんしゅとなって、今日まで呪われて来た報いが、あんな坊主にわかってたまるものか。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
然しながらかの癌腫がんしゅの様な家の運命は、往く所まで往かねばならなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これらの動物は、神経を切られたり、動脈へゴム管を挿されたり、病菌を植付けられたり、耳にコールタールを塗って癌腫がんしゅの見本を作られたりする。
病院風景 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けれどついに、マルトは腸の癌腫がんしゅで死にかかってるのだということを知り得た。もう数か月前からの病気だった。
吐く息が、そのまま固まりになってすぐ次の息に吸い込まれるような、胸の悪いし暑さであった。嘔吐物おうとぶつの臭気と、癌腫がんしゅらしい分泌物ぶんぴぶつとの臭気は相変らず鼻をいた。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
いつか膵臓すいぞう癌腫がんしゅで死んだ患者があったとき、去定が蘭語ですらすらと病状を云った。
やっかいな癌腫がんしゅはそういう反逆者の群れでできるものらしい。
破片 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
癌腫がんしゅの研究
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)