痴漢ちかん)” の例文
鬼のような深山は、赤外線利用の技術を悪用して、それまでにも、人の寝室をひそかに写真にとっては、打ち興じていたという痴漢ちかんです。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
、捕え得ぬなど、言語道断。ひとりの痴漢ちかんをからめ捕るにすら、かくも能なき武者所に、なんで非常のときを、たのめようか
本郷妻戀町つまごひちやうの娘横丁、——この邊に良い娘が多いから土地の若い衆が斯んな名で呼びましたが、何時の間にやら痴漢ちかんが横行して、若い娘の御難が多く、娘受難横丁と言ふべきを省略して娘横丁と
酔いの廻った彦太郎がべらべら喋舌りつづけるのを、阿部がとって、わあ、これは聞き捨てならぬぞ、痴漢ちかん小森彦太郎便所を覗くの図か、君はそいつを見ようと思ってこの商売をして居るんだろう
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
見たがる手合もある町内の若い衆などは年中見馴みなれているはずだのに物好きな痴漢ちかんはいつの世にも絶えないもので雲雀の声が聞えるとそれ女師匠が拝めるぞとばかり急いで屋根へ上って行った彼がそんなに騒いだのは盲目というところに特別の魅力みりょくと深みを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ここへ来る前、星野社長はわざわざ、帆村の潔癖けっぺきを保証したが、その話とはちがって、彼はとんでもない痴漢ちかんであった。六条子爵の場合よりも、もっともっと露骨ろこつ下卑げびている。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これに類する報告は、日一日とえていった。しかし赤外線男のすることが、この辺の程度なら、それは悪戯小僧いたずらこぞう又は軽い痴漢ちかんみたいなもので、迷惑ではあるけれど、大して恐ろしいものではない。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)