やつ)” の例文
見ると、鼻下に立派な髭をたくわえた一見品のある紳士であるが、ひどくやつれて病人のようにしか思われない。
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
板のやうな掛蒲団をあはせの上にかぶつて禿筆ちびふでを噛みつゝ原稿紙にむかふ日に焼けてあかゞね色をしたる頬のやつれて顴骨くわんこつの高く現れた神経質らしいおな年輩としごろの男を冷やかに見て
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
大杉の一生を花やかにした野枝さんとの恋愛の犠牲となった先妻の堀保子も、イヤで別れたのでない大杉に最後の訣別わかれを告げに来て慎ましやかに控えていたが、恋と生活とにやつれた姿は淋しかった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)