痩浪人やせろうにん)” の例文
「やい武士さんぴんッ、うぬあ京極方に味方して、春日様の足を打ッ挫いた痩浪人やせろうにんだろう。この先へ行くことあならねえからそう思えッ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のみならず、召し出されてお城の要役ようえきにある者が、斯く一致団結して当りながら、元同僚とは申せ、今は痩浪人やせろうにんである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
後世のいわゆる「万鍾ばんしょう我において何をか加えん」の気骨も、炯々たるその眼光も、痩浪人やせろうにんいたずらなる誇負こふから離れて、既に堂々たる一家の風格を備えて来た。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
伊右衛門は女房は子孫のためにめとるもので、めかけとして遊ぶものでないから、それほど吟味をするにも及ばないと思った。この痩浪人やせろうにんは一刻も早く三十俵二人扶持ぶち地位みぶんになりたかったのであった。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「覚えてやがれ、このごろ来た御陣屋の痩浪人やせろうにんに違いない」
おだまンなさいよ、痩浪人やせろうにん! 第一さ、見返りお綱に惚れるなんて、身のほど知らずというものだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
痩浪人やせろうにんはいずこにある! のがすなッ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)