生母せいぼ)” の例文
周三はまた、「何點どこか俺の生母せいぼに似たとこがある。」と思ツた。で何となく懐慕なつかしいやうにも思はれ、また其のさびしい末路まつろあはれになツて
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼の生母せいぼの最後の運命に関する僕の話は、わずか二三分で尽きてしまった。彼は遺憾いかんな顔をして彼女の名前を聞いた。さいわいにして僕は御弓おゆみという古風な名を忘れずにいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そもそも周三が生母せいぼの手をはなれて、父子爵の手許てもとへ迎へられたのは、彼が十四の春であつた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
此の間、彼の頭に殘るやうな出來事と謂へば、ただ生母せいぼくなられた位のことであつた。それすら青春せいしゆんの血のゆる彼に取つては、些と輕い悲哀を感じた位のことで、決して左程さほどの打撃では無かつた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)