生傷なまきず)” の例文
それも度重なつては、犬の喧嘩と振向いて見るものなく、女房の顔には殆ど生傷なまきずが絶えぬといふやうなむしろ浅ましい境遇に陥つて行つた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
数坂峠かずさかとうげという山又山を歩いて居りますも、うちに居れば母親はゝおやおかめに虐められまして、実に生傷なまきずの絶える事がないくらいの訳ですからうちにとては居りませんで
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あんた、いつかてリヽーに引つ掻かれて、生傷なまきず絶やしたことないのんに、わてが抓つたら痛いのんか。」
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この半年ばかりというもの、母親はからだに生傷なまきずが絶えないのだ。それを見ると、兄貴がかんしゃくもちだからね——歯ぎしりをして、親父に飛びかかって行くのだ……
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その禿というのは、天性、毛髪が不足しているというわけではなく、相当の期間以前に生傷なまきずであったものが癒着ゆちゃくして、この部分だけ毛髪がなくなっているのだとしか見られないのです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あんた、いつかてリヽーに引つ掻かれて、生傷なまきず絶やしたことないのんに、わてが抓つたら痛いのんか。」
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「あんた、いつかてリリーに引っかれて、生傷なまきず絶やしたことないのんに、わてが抓ったら痛いのんか。」
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)